さまざまな業界で導入が進むドローンですが、その飛行や操縦には法律や自治体により細かなルールが定められています。
その中で、2022年12月5日に、ドローンの市街地を含む有人地帯における”目視外飛行”を認める改正航空法が施行されました。
所謂「レベル4飛行」が解禁され、今後は更に幅広い分野においてドローンが活用されることが期待されています。
そこでこの記事では、今回注目されたドローンの目視外飛行、レベル4飛行とは何なのかを分かりやすく解説していきます。
ドローンの「目視外飛行」とは?
ドローンの目視外飛行とは、文字通り操縦者がドローンを目視しない状態で飛行させる飛行方法のことを言います。
通常、ドローンの操縦はドローンを直接見ながら操作する必要がありますが、例えばドローンを操縦しながら撮影している映像の確認を行いたい、ビルやダム等の点検でドローンを使う場合、その形状によってドローンを目視で確認できないといった状況において、モニターの画面を見ながら飛行させる方法が取られ大変便利です。
しかし一方で目視外飛行はカメラの映像を頼りに操作するわけですから、周囲に接触したり落下する危険性を伴い難易度の高い飛行法であるとともに、航空法で様々な規制がされています。
ドローンの目視外飛行におけるルール
ドローンの目視飛行は航空法の第132条により制限がされ、目視外で飛行させるには飛行許可の申請をし、国土交通大臣から承認を得る必要があります。
国土交通省では許可の判断をする条件に「基本的な操縦技量の習得」を掲げており、申請をしたからといって必ず許可されるとは限りません。
機体が100g未満の小型のドローンの場合は規制の対象にならず、申請しなくても目視外飛行をすることが可能です。
また、目視外飛行ができる場所については、これまで「無人地帯のみ」とされていましたが、今回の法改正によってこの規制が緩和され、有人地帯においても一定の条件を満たすことで飛行が可能となりました。(=レベル4飛行の解禁)
ドローンの飛行レベルとは
ドローンの飛行レベルは、現在、以下の段階に分けられています。
レベル1:「目視内で操縦飛行」
ドローンが見える範囲で手動操作を行います。主に農薬の散布や橋梁などのインフラ点検など
レベル2:「目視内で自律飛行」
ドローンが見える範囲で自動運転の機能を使って離着陸の場所、飛行ルート、速度などをプログラムさせて飛行を行います。主に空中写真測量、ソーラーパネルや屋根の設備点検など
レベル3:「無人地帯での目視外飛行」
補助者の配置なしで住民や歩行者のいない無人のエリアで、目の届かない範囲まで飛行させます。主に山間部、河川の測量、被災状況の調査、行方不明者の捜索など
レベル4:「有人地帯での目視外飛行」
補助者の配置なしで都市部や市街地などを含めた人口が集中しているエリアで、目の届かない範囲まで飛行させます。
今回このレベル4が解禁されたことで何が出来るようになるのか、具体的に紹介していきます。
ドローンの目視外飛行「レベル4飛行」で期待されること
ドローンの「レベル4飛行」は、より”空”という場所を活用して社会に大きな変化をもたらすだろうと言われています。現在、実現を期待されている主なことを以下に挙げてみます。
・物流
レベル4解禁により、最も大きな変化を期待されているのが「物流」の分野です。
オンラインショッピングの広がりにより需要が高まる反面、交通渋滞やドライバーの不足、再配達などの非効率、CO2排出など様々な問題を抱えていましたが、レベル4の解禁によってドローンを活用した上空からの配達が実現することで、配達時間の短縮、燃料費の削減、災害時の救援物資の輸送、離島や山間部への配達サービスも素早く行えるようになり、多くのメリットをもたらします。
とはいえ有人地帯を広範囲または長距離の飛行するわけですからすぐに実現する訳ではなく、実現に向けて安全面や性能についての実証実験をまだまだ重ねていく段階にあります。
・映像メディア
観客が集まるイベント施設やスタジアムでのスポーツ中継など、ドローンを利用して迫力ある映像や写真の撮影を行うことが出来るようになります。
また、このような場所の警備においてもドローンを活用することが出来ます。
・災害時の救助、支援
日本は災害が多いため、この分野でのドローンの活用も非常に期待されています。
災害時の救助活動や被災地への医療品、食料など救援物資の配送、被災状況の確認など、人が行けない場所や到着までに時間を要する場所においても、無人で飛行できるドローンなら安全に活動することが可能となります。
・都市部のインフラ点検
既に導入が進んでいる建設現場などの測量や、橋梁、砂防ダム、高所といった危険な場所の点検も、ドローンを活用することで安全かつ効率的に作業を進めることが出来ます。
これまでは人口集中区域においてドローンでの点検は行えませんでしたが、レベル4の解禁によって活用の幅は広がります。
ドローンのレベル4飛行に関する制度
レベル4飛行をを安全に実現するために、さまざまな制度が設けられています。
・ドローン機体認証制度
ドローンの機体の安全性を確保するための制度であり、以下の2種類の認証があります。
・第一種型式認証・第一種機体認証
・第二種型式認証・第二種機体認証
国土交通省が定める強度、構造及び性能などの安全基準に適合するかどうかを検査し、レベル4飛行が可能な第一種認証とそれ以外の第二種認証に分けられます。
有効期限は第一種が1年、第ニ種が3年とされています。
・無人航空機操縦者技能証明
ドローンを飛行させるために必要な技能(知識及び能力)を有することを証明する資格制度です。
「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」があり、これは全てのドローン飛行において必要なものではありませんが、レベル4の飛行を行うためには「一等無人航空機操縦士」の資格を取得しなければなりません。
登録講習機関において、無人航空機に関する知識・能力についての 学科および実地の無人航空機講習を受講し、指定の試験機関で学科試験、実地試験、身体検査を受験し、技能証明書の交付申請を行う必要があります。
まとめ
以上のように、有人地帯での目視外飛行が可能なレベル4飛行の解禁により、ドローンは私たちにより身近で欠かせない存在となり、その活躍はますます期待されています。
安全なドローン飛行が行われるよう、まだまだ実験や整備は重ねられていくと思いますが、生活しながらふと空を見上げるとドローンが飛び交っている・・・という光景は近い未来現実になるでしょう。