「ドローン点検」とは?
ドローン点検とは、無人機であるドローンにカメラを搭載し、空中を飛行させ対象物を空撮して施設や設備等の点検を行う手法です。
従来の点検方法では、作業員が人が立ち入るには危険な場所や高所などに上る必要があり、安全面でリスクが大きく、作業にかかる時間や人員などの面でもコストや課題の大きな方法でした。
しかしドローン点検を活用することでこれらの問題が解消され、ますます精度の高い点検を実施することが可能となったのです。
また、2021年9月に航空法施行規則の一部が改正されたことでドローンの規制も緩和(例:煙突や点っとうなどの周辺が飛行禁止空域から除外)されたことから、さまざまな場所、場面でさらなる活躍が期待され注目を集めている状況です。
ドローン点検のメリット
それではドローン点検を活用することで得られる主なメリットについて、以下に紹介してまいります。
現在、ドローンの導入を検討されている企業の担当者の方にぜひ参考にしていただければと思います。
安全に点検作業を行える
先述したように、高い場所や人が入るには危険な場所の点検を行わなければならない時、これまでの方法では作業を行う人員の落下など安全性が心配されていました。
安全を確保するために足場を組んだり慎重に計画を立て準備を行うことが事故を防止するために必須ですが、それでも毎年のように墜落や転落といった労働災害が発生しています。
その問題を大きく解決する方法がドローンによる点検です。
ドローンは安全な場所から遠隔で操縦しますし、作業に関わる人員は少なく、安全で効率的に作業を進めることができる点は、非常に大きなメリットです。
高精度な点検を行える
ドローン点検は従来の点検と比べ精度の高い点検を行えることもメリットです。
高性能なカメラを搭載し細かなデータを収集できるため正確な評価ができるようになったこと、そして近年は進歩したAI技術との組み合わせにより、より高度な分析を可能としました。
点検対象に合わせて赤外線やセンサーを活用すれば、老朽化や損傷、破損、異常を一早く検出することもできるため、メンテナンスという面でも力を発揮します。
人員の削減
こちらも上記で少し記載しましたが、ドローン点検は従来の方法よりも少ない人数で点検作業を実施、完了させることが可能です。
多くの業種や分野、産業で点検作業に関する人手不足が問題となっている現在、少数で広範囲あるいは複数の箇所の点検の効率化を実現できることは大きなメリットです。
時間の削減
点検作業には計画、準備、移動、点検などに膨大な作業時間を必要としていましたが、ドローンを利用することでそれぞれの手間や時間を大幅に短縮することができます。
国土交通省の公表によると、従来の橋梁点検車点検は3時間かかっていたところ、ドローン点検では1時間で点検作業が完了したとの検証の結果がありました。
費用の削減
以上のように、人員、作業時間が削減されることで、当然それぞれにかかっていたコスト削減にもつながります。
他にも、従来の点検作業で橋梁点検車やロープアクセス等を使用すると人件費を含めさまざまなコストがかかり高額になりがちでしたが、ドローン点検ではそれらが不要となるケースが多く数十万円以上の費用を削減できる可能性が高いのです。
点検で役立つドローンの機能
これだけドローン点検が活躍しているのは、ドローンにあるさまざまな機能が役立っているからでしょう。どんな機能があるのか、その便利な機能について紹介します。
AIによる画像解析
ドローンが上空から撮影した動画や映像はAIで画像解析することができます。
画像処理を行い、人間が目でチェックするよりも正確に、よりスピーディーに異常を見つけ判断することが可能です。
光学ズームカメラ
光学ズームカメラをドローンに搭載すると、遠隔からより詳細な状況を確認することが可能となります。
広い範囲の点検や危険な場所の点検に役立ちます。
赤外線カメラ
温度を可視化することができる赤外線カメラは、壁の剥離などを検知することも可能となります。
一早く劣化や損傷を発見し適切な対応を行うことで、深刻な事態を防ぎ人々の安全に大きく役立ちます。
作業の様子を一緒に確認できる
例えば自宅の屋根の点検を依頼した際、これまでの方法では作業員のみが直接状況を把握
できる存在で、依頼者は後から言葉や写真、資料で報告を受ける流れが一般的でした。
専門用語などで理解が難しく、言われるがまま修理などの話が進んでいくケースが多かったように思います。
しかしドローン点検であれば、タブレット等を用いて業者と一緒に同時に映像を確認しながら説明を受けることができるので、現状を把握しやすく安心して進めることができます。
ドローン点検のデメリット
以上のようにたくさんのメリットがあるドローン点検ですが、現時点ではいくつかのデメリットや課題も抱えています。
例えば、これまでの人為的な方法によるハンマー等で打った音などで判断する「打診調査」、直接触れて診断する「触診」のように、目視以外の方法で異常を検知することが困難な点です。
場所によってはドローン点検と打診調査を併用することが必要となります。
また、法律や自治体の制度によって飛行が制限されることもあります。
例えば空港の周辺や人口集中地区など、地上にいる人たちの安全を損なう可能性のあるエリアでは飛ばすことが制限されたり、許可や承認の取得や申請を行う必要が出てきます。
どこでも自由にドローンを飛ばせるわけではないということに注意しなければなりません。
また、異常が見つかってもその場で応急処置ができないという点も従来の方法と比較してデメリットとも言えます。
その代わり、迅速な修繕計画を行い別途現場へ作業員を派遣する形になります。
そしてドローンの弱点である天候に左右されやすい点。小型な機体であることはメリットも大きいですが、その分影響を受けやすいため強い雨や強風の日には飛行を行えません。そのため、事前に台風や風速も含め天気予報を調べて点検日をスケジュールしたり、当日、点検中に悪天候になった場合、中止しなくてはならないこともあります。
ドローン点検の活用事例
それでは実際にドローンではどのような場所での点検に活用できるのかについて紹介してまいります。あくまで活用事例の一部であり、これ以外にも多くの場所、場面でドローン点検は活躍しています。
屋根
ドローン点検は高層建築物や戸建て住宅などの屋根点検にも導入されています。
従来の点検には高い費用や期間がかかっていたため、特に個人の家では何か問題やトラブルが発生してからでないと定期的に点検を実施することが難しく、先延ばしされるケースが少なくありませんでした。
しかしドローン点検であれば短時間で済むこと、コストも抑えられることで需要が高まっています。
建築物の外壁
屋根と同様、マンションやビルなどの建物や戸建ての点検で屋根の他にドローン点検が用いられるのが外壁の点検です。
外壁の壁面というのは雨風や紫外線に直接さらされているため、時間の経過に伴いひび割れや劣化が起こりやすく建物の安全のために定期点検が欠かせません。
しかし高所の点検は足場を組むコストやクレーンやゴンドラ等の機材のコスト、人件費、工期がかかることや安全性の確保がネックです。
ドローン点検はこの問題を解決する上で大きな役割を果たしており、ホテルや病院などを含めた12条点検に多く活用されています。
また、赤外線カメラを搭載することで目視では確認が難しい壁の内部の問題に対しても温度差を利用して検知できるため、一早く修理につなげることが可能です。
橋
橋梁の点検も建物と同様に高所での作業となるため、ドローンを使用することで安全に構造物の状態を点検し、異常や原因を迅速に発見して修繕や補修計画を立てる際に役立ちます。
また、従来の方法だと通行止めなどの規制が必要となるケースが多いのですが、ドローン点検なら規制せず、作業者も最小限の人数で行えるため将来的にドローンでの橋梁点検は広く普及されることが予想できます。
工場・プラント
工場やプラントでは定期的な点検は非常に重要です。不具合が起きて稼働が停止してしまえば、生産性が低下し幅広い影響や重大な危険を及ぼす可能性があるためです。
とはいえ人による点検作業も危険性を伴うことが多い場所なので、ドローン点検の導入が高い注目を浴びている分野です。
発電施設
田舎に設置されていることが多い太陽光発電や風力施設は、点検に際し作業員の派遣に人件費がかさみます。
また、こちらも高所での作業が多くなるため安全面を慎重に確保しなくてはなりません。
そこでドローン点検の出番です。
少人数で安全に、低いコストで効率良く業務を行うことが可能です。
道路
高速道路を含め、道路の点検にもドローン点検は活用されています。
今までは点検車両が道路を低速で走行し、目視で検査を行っていました。
しかしその方法ではもちろん時間と人員が必要で大きな課題とされており、それらを解決するためにドローン点検に多くの期待が寄せられています。
鉄道
鉄道の点検は通常、列車の運行のない夜間に作業が行われています。
しかしドローン点検を利用すれば、昼夜問わず、列車の運行中も上空から検査を行うことが可能なのです、
トンネル内の点検もできるため、素早い異常の検知と修復が重要な鉄道の点検でもドローンは重要な役割を担っています。
まとめ
今回の記事では、ドローン点検のメリットや機能、具体的な活用事例を用いて、ドローン点検がいかに効率的で安全なインフラ管理や施設点検ができるのか、といった点を解説させていただきました。
ドローンはこのような点検以外にも、既に建築現場における測量や災害時の状況確認、救援・救護、物流などさまざまな業界で実証実験を行いながら活躍を始めています。
技術者たちが精度の向上に向けて常に研究、開発を進めている状況にもありますので、今後ますます活躍の場を広げていくのは間違いないでしょう。
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