ドローン技術の進化により、測量の分野でもドローンを活用した新しい手法が注目されています。従来の測量方法と比較して、ドローンを使用した測量は迅速かつ高精度であり、コスト効率も高いことから、建設業界や農業、環境調査など幅広い分野で活用が進んでいます。今回の記事では、ドローン測量の基礎知識から具体的な手法、活用事例、注意点について詳しく解説します。
ドローン測量の基礎知識
ドローン測量とは、無人航空機(ドローン)を使用して地形や構造物のデータを収集する手法です。ドローンに搭載されたカメラやセンサーを利用して、空中から地表を撮影し、その画像を解析して3次元モデルや地図を作成します。これにより、広範囲のデータを短時間で取得することが可能となります。
ドローン測量のメリット
迅速なデータ収集
広範囲のデータを短時間で収集できるため、大規模なプロジェクトでも迅速に対応することが可能で、作業時間を大幅に短縮することができます。
高精度
ドローンの機体に高解像度のカメラやGPS、センサーを使用することで、地点の座標など詳細なデータを取得でき、信頼性の高い測量結果を納品することが可能です。
コスト効率
ドローン測量は従来の測量方法に比べて人件費や機材費を大幅に削減でき、コスト効率が高い方法です。特に広範囲の土地、高低差のあるような地形で効果が高まります。
安全性
ドローン測量は危険な場所でも人が立ち入って作業することは不要です。そのため、業務全体における安全性が向上します。
ドローン測量のデメリット
費用
ドローンによる写真測量は条件によって高額になるケースもあります。狭い範囲でフラットな地表の測量であれば、従来のトータルステーション等を用いた地上測量の方が安くできる可能性があります。
持続時間
ドローンの機体のバッテリーは持続時間が短く、広範囲の測量を行う際は途中でバッテリーの交換が必要となります。
精度の限界
ドローン測量のGPS測位精度には限界があります。例えば建物や樹木などの場所は正確な測量が苦手です。点群データを取得するためには位置情報が不可欠です。
資格
2012年12月からドローンの操縦においてライセンスが必要になりました。第三者上空の飛行や夜間の飛行、人のいるエリアで目視外の飛行を行う時には無人航空機操縦者技能証明書が必要となります。同時に機体認証も必要となりました。
墜落リスク
ドローンにトラブルや問題が発生したり雨や風など天候の影響で墜落するリスクがあります。この場合、国土交通大臣へ報告や救援義務が発生します。測量前の点検や調査、準備は念入りに行ってください。
ドローン測量の具体的な方法
機材の選定
ドローン測量に使用する機材は、用途に応じて選定する必要があります。一般的には、以下のような機材が使用されます。
<ドローン本体>
高い飛行安定性と長時間の飛行が可能な機種が適しています。
<カメラ>
高解像度カメラやマルチスペクトルカメラ、LiDAR(ライダー)センサー等が使用されます。
<GPS>
高精度な位置情報を取得するためのGPSユニットが必要です。
飛行計画の立案
ドローン測量を実施する際には、事前に飛行計画を立案します。飛行計画には、以下の要素が含まれます。
<測量範囲の設定>
測量する範囲を明確にし、必要なデータを取得するための飛行経路を決定します。
<飛行高度の設定>
飛行高度は、取得するデータの解像度に影響します。必要な解像度に応じて適切な飛行高度を設定します。
<重複度の設定>
撮影画像の重複度(オーバーラップ)を設定することで、解析時の精度を向上させます。
飛行とデータ収集
飛行計画に基づいてドローンを飛行させ、データを収集します。飛行中は、以下の点に注意が必要です。
<天候の確認>
風速や降雨など、飛行に影響を与える天候条件を確認します。
<飛行の安全確保>
飛行エリア内に障害物がないか確認し、安全に飛行できる環境を整えます。
<データの確認>
飛行中に取得したデータを適宜確認し、必要に応じて再撮影を行います。
データの解析
収集したデータは、専用のソフトウェアを使って解析します。一般的な解析手法として、以下のものがあります。
<オルソモザイク画像の作成>
撮影した複数の画像を合成して、地形の詳細なオルソモザイク画像を作成します。
<三次元モデルの生成>
画像データを基に三次元モデルを生成し、地形や構造物の詳細なモデルを作成します。
<デジタル標高モデル(DEM)の作成>
地形の標高データを解析し、デジタル標高モデルを作成します。
ドローン測量の活用事例
建設業界
建設現場では、ドローン測量が進捗管理や土量計算、地形調査などに活用されています。高精度なデータを迅速に取得できるため、プロジェクトの効率化とコスト削減に貢献しています。
農業
農業分野では、ドローン測量が作物の生育状況や土壌状態のモニタリングに使用されています。マルチスペクトルカメラを搭載したドローンを使用することで、作物の健康状態や栄養状態を詳細に把握できます。
環境調査
環境調査では、ドローン測量が森林の健康状態や河川の浸食状況のモニタリングに利用されています。人が立ち入るのが難しいエリアでも安全にデータを収集できるため、環境保護活動にも役立っています。
ドローン測量の注意点
法規制の遵守
ドローンを使用する際は、各国の法規制を遵守する必要があります。飛行許可の取得や飛行エリアの制限を確認し、適切な手続きを行うことが重要です。
データの精度管理
高精度なデータを取得するためには、飛行計画や機材の設定に細心の注意を払う必要があります。また、取得したデータの精度を確認し、必要に応じて再飛行やデータ修正を行うことが求められます。
安全対策
ドローンの飛行中は、周囲の安全を確保するための対策が必要です。飛行前にエリア内の障害物や人の有無を確認し、安全に飛行できる環境を整えることが重要です。
ドローン測量の課題
最後に、ドローン測量の運用に関する今後の課題について紹介します。
導入コスト
ドローン測量を導入するためには、機体と画像解析をするためのソフトを用意しなければなりません。また、操縦のための知識や技術を取得するため、講習を受ける必要もあるでしょう。
それらにかかるコストを上回るには、しっかりドローン測量を活用できるかどうかを検討しなければなりません。
ドローン本体の価格というのは、性能とともにかなり異なります。会社の用途や目的に合わせ、どの程度の性能の商品を選べば良いのか、メンテナンスの方法、買い換えのタイミングといった情報も知識として持つことが重要です。
リスク管理
ドローンのデメリットでも説明しましたが、ドローン測量には墜落事故、接触事故といったリスクが伴うことをしっかり意識することが大切です。
特にドローン測量では重量のある高性能カメラを搭載しているケースが多く、万が一事故を起こした場合に被害が大きくなる可能性があります。
そのため、ドローンの運用リスクをしっかりと把握し、安全対策を取ることは必須です。
まとめ
以上のように、ドローン測量は、迅速かつ高精度なデータ収集が可能であり、さまざまな分野で活用が進んでいます。適切な機材の選定や飛行計画の立案、安全対策を徹底することで、効率的に高品質なデータを取得出来ます。ドローン測量を効果的に活用し、プロジェクトの効率化と精度向上に貢献しましょう。
ドローンの開発は現在も日々進歩しており、測量専用の機体や自動航行アプリによる操縦で操縦技術をカバーできるようにもなりました。
また国土交通省は、建設業界においてi-Constructionという取り組みの中でドローン導入の推進、国土地理院による「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」で測量方法を明確化する等、ドローンの導入に向け国や自治体がサポートを強化しています。
さまざまな課題がまだ残されつつも、今後ますますドローン測量が活躍の場を広げビジネスが発展していくことは間違いないでしょう。
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