ドローンを使った測量は、これまでの方法と比べると短時間で広範囲の測量が出来、精度も高く、更に安価で行うことが可能なため、建設業界をはじめ、現在はさまざまな分野で活躍しています。
そこで今回の記事では、ドローンの導入にまだ躊躇しているという会社様や担当者の方に向け、ドローン測量の方法とその特徴を簡単に解説いたします。
どうぞ最後までご覧ください。
ドローン測量とは
測量とは、地球表面上の点の位置関係を数値や図面で表す技術や作業の総称のことを言い、主に地図の作成や建設現場などで用いられます。
三角測量から始まり、その後は光を利用したトランシット(測距機)による三辺測量、GPS測量、そして現在は衛星システムを利用したGNSS測量や空中写真測量へと進化しています。
そしてこれまで空中写真測量を担っていた航空機に代わり、登場したのがドローンなのです。
ドローン測量の資格について
「ドローン測量を行う際に何か資格は必要なのか?」という疑問を持たれている方も多いかと思います。
結論からいいますと、2022年の時点ではドローンの操縦や飛行に資格や免許は不要です。
とはいえドローン測量は誰でも行えるわけではなく、当然ドローンの操作や撮影、解析、編集などの技術が必要になりますし、建築や土木、測量に関する知識も求められることになります。
また、国家資格ではなく国土交通省に認可された民間団体(DPA、JUIDA、DJI CAMP
等)による民間資格があり、取得することで飛行許可を申請する際の書類の簡略化や、飛行エリアや飛行形態で規制や制限のかかっているものを解除することが出来るようになります。
これらの資格は講習を受けて試験に合格することで取得することが可能です。
ドローン測量の方法と種類
ドローン測量の方法は実は複数の種類が存在しています。
それぞれの特徴、メリット・デメリットを以下に説明します。
ドローン測量の方法1.空中写真測量
ドローン測量の方法、まず一つ目は写真測量です。
空中写真測量とは、ドローンに搭載した光学カメラで上空から地面を撮影し測量する方法のことを言います。航空写真と地上に設置したGCPによる位置情報を利用します。
カメラが標準装備されているドローンを使用すれば、他に専門的な道具も必要なくただ撮影を行うだけなので、簡単で手軽に行える上にコストも抑えられるというメリットがあります。
測量の手法としては1枚ではなく撮影コースも変えて複数枚の写真を撮影し、それらを重複させることによって解析を行い、立体的なデータを取得します。
デメリットとしては、樹木の多い場所では測量が難しく正確に行うことが出来ないという点でしょう。その場合、他の測量方法と組み合わせることがおすすめです。
ドローン測量の方法2.レーザー測量
レーザー測量は、上記の写真測量が行えない場所で用いられる方法になります。
ドローンに搭載したレーザーによって地表との距離を計測します。
空撮での測量と比べ精度が高いのが特徴ですが、一方でレーザー発信機は1,000万円以上の製品がほとんどと非常に高く、購入費用がかかること、そしてある程度の技術力も求められる点がネックです。
ドローン測量の方法3.グリーンレーザー測量
地表ではなく河川や港湾等で測量を行う場合に適しているのがグリーンレーザー測量です。
グリーンレーザーとは、水の影響を受けず水底まで測定することが可能な特殊なレーザーです。
水の透明度によって精度は変わるものの、人力で水底の測量を行うには無理があるため、グリーンレーザーは非常に役立ちます。
デメリットとしては、やはり機材の価格が高価であること、そして2022年時点の技術ではまだまだ大型な機器が多くドローンもそれに合わせて大型のものを用いる必要がある点です。
ドローン測量の準備
ドローン測量をどの方法で実施するかによって、必要なものや搭載するものは異なります。
例えば空中写真測量であればカメラやGPS、高度計が。レーザー測量を行うのであればレーザー測距装置が必要となります。
また、上記で説明した通りグリーンレーザー測量のような大きな機器を搭載する場合には、使用するドローンの機体も大きくしなくてはなりません。
他には飛行ルートの設定や測量に必要となる専用のソフトウェアやアプリ、ドローンを飛行させる許可を得る際に必要な保険の加入なども準備しておきましょう。
また、ドローンに関する規定や条件は飛行させる地域によっても異なりますし、法律や制度に関しても度々変わるため、ドローン測量を行う前に必ずチェックするようにして下さい。
ドローン測量の主な手順
それでは実際にドローン測量を行う主な流れを紹介していきます。
1.現地調査を行う
ドローンで測量を行う現地の調査をまずは行います。これは、ドローンで測量が可能かどうかを判断するためです。そして地形や状況を見てどの方法で測量を行うことが適しているのか、ということも確認します。
2.飛行ルートを計画する
ドローンを飛ばす位置から測量したい場所までのルートや高度など、飛行ルートを地図を見ながら作成していきます。
道筋にある建物や障害などはもちろん、測量方法や使用するドローンの機能や性能も考慮して正確に飛行ルートを決めなければなりません。
まだ慣れていない場合にはドローン測量に詳しい人や業者に協力を依頼をしてルート作成を行うことをおすすめします。
3.GCP(対空標識)を設置する
次に、「座標がわかっている地上点」を意味するGCP(対空標識)を設置します。
GCPの測定にはトータルステーションなどの測量機を使ってチェッカーを置きます。
チェッカーはドローンで撮影した画像で実際の場所を確認したり、3Dソフトへ自動認識させる時の基準となる重要なものです。
ちなみにGCPは「円形または辺長で、直径15pix以上」という寸法の規定があるので覚えておきましょう。
4.ドローン測量を実施
準備ができたらドローンを飛行させ測量を実施します。
ドローンは基本的に設定した飛行ルートに沿って自動で操縦が行われますが、樹木の多い場所やドローン測量が難しい土地の形状や状態などにおいては一部手動で操縦しなければなりません。
また、ドローンでの撮影では縦方向80%以上、横方向60%以上という「ラップ率」が定められています。ラップ率を計算してくれるアプリを利用すると便利です。
5.解析する
ドローンでの撮影が終わったら、次は専用ソフトを使って解析を行い3Dデータを作成します。作成後は撮影時の座標値と比較し、検証することも大切です。
ちなみに3Dデータにはドローンで撮影した写真と地図データを重ね合わせて取得できる地理空間情報である「オルソ画像」と、空中から取得したXYZ軸の情報である「3次元点群データ」と呼ばれるものがあります。
オルソ画像は写真を複数組み合わせることで、傾きや歪みを修正してより正確な位置やサイズを算出し、距離を測ることも可能です。
三次元点群データは専用のソフトで加工することで、容易に距離の計測や盛土の体積を算出することが可能となり、3Dモデルや図面の作成、出来高の管理に活用することが出来ます。
6.図面の作成
解析が完了したら、3Dデータから図面など必要な物や資料を作成してドローン測量の一連の作業は終了します。
依頼者によっては現場での作業写真や飛行実績を求められることもありますので、あらかじめ記録しておくことをおすすめします。
■ドローン測量の主なメリット
ドローン測量では、これまでの測量方法と比べてさまざまなメリットが得られます。
例えば、上空から短い時間で広い範囲の写真や動画を撮影したりレーザーを照射することで簡単にこれまでよりも誤差の少ないデータを取得できたり、無人航空機(UAV)であるため危険な場所でも安全に測量することが可能です。
また、作業時間の短縮、生産性の向上、人件費などのコストを大幅に抑えコスト削減も期待できます。
■ドローン測量の主なデメリット
一方でドローン測量によるデメリットもいくつか考えられます。
例えば、狭い面積や平坦な土地であれば、従来の人力での測量の方が効率良く行える場合がありますし、長時間の測量では途中でバッテリーを交換する必要があり、その分の時間と手間がかかります。そのため、準備の段階で必ずバッテリーの持ち時間と測量で必要な時間を計算し、スムーズに作業を進められるようにしておくことが重要です。